小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠とは?賃金引上げ枠の活用方法について

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠とは?賃金引上げ枠の活用方法について

小規模事業者持続化補助金の特別枠に「賃金引上げ枠」という特別枠があります。

「賃金引上げ枠」は積極的な賃上げに取り組む事業者を支援するための申請枠となります。

今回の記事では小規模事業者持続化補助金の「賃金引上げ枠」について、内容と活用方法をまとめます。

小規模事業者持続化補助金とはどんな補助金?

そもそも小規模事業者持続化補助金とはどのような補助金なのでしょうか。

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取組に要する経費の一部を支援する補助金です。

小規模事業者持続化補助金には通常枠に加えて、「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」などの特別枠も用意されています。

詳しくは事務局のホームページをご確認下さい。

申請類型一覧

類型対象
通常枠小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会・商工
会議所の支援を受けながら行う販路開拓等の取組を支援。
賃金引き上げ枠販路開拓の取り組みに加え、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+50円以上である小規模事業者※赤字事業者は、補助率3/4に引上げ
卒業枠販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者
後継者支援枠販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリスト及び準ファイナリストに選ばれた小規模事業者
創業枠産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」による支援を受けた日および開業日(設立年月日)が公募締切時から起算して過去 3 か年の間である、販路開拓に取り組む小規模事業者

補助率・補助上限額

通常枠・特別枠ごとの補助率・補助上限額は以下の通りです。

申請類型補助上限補助率
通常枠50万円2/3
賃金引上げ枠200万円2/3
(赤字事業者については3/4)
卒業枠2/3
後継者支援枠
創業枠
【インボイス特例】すべての類型において、インボイス特例要件を満たす場合は、上記補助上限額に50万円を上乗せ

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠の特典と条件

賃金引上げ枠の特典とは?

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠の特典は、補助上限額がアップすること、さらに赤字事業者の場合は補助率が上昇することです。

賃金引上げ枠では、補助上限額が通常枠の50万円から200万円にアップします。

インボイス特例も活用することで最大250万円まで補助上限額を引き上げることが可能です。

なお、賃金引上げ枠で申請する業績が赤字の事業者については、補助率が2/3から3/4に引きあがるという特典もあります。

いのうえ

補助上限額が200万円(インボイス特例も含むと250万円)、赤字事業者の場合は補助率3/4と非常に優遇される申請枠です。

賃金引上げ枠の条件とは

小規模事業者持続化補助金を賃金引上げ枠で申請するためには、以下の条件を満たす必要があります。

賃金引上げ枠で申請するために必要な条件とは

  • 事業場内最低賃金地域の最低賃金より+50円とすること

事業場内最低賃金ってなんのこと?いつの時点で判断されるの?

いのうえ

賃金引上げ枠の申請条件についてもう少し詳しく見ていきましょう。

事業場内最低賃金とは何か?

「事業場内最低賃金」とは、事業者の事業場(店舗や会社)における最低賃金のことです。

正規雇用者だけではなく、パート・アルバイト等の非正規雇用者を含めて判断をします。

最低賃金」の概念は「時間単価」です。

1時間当たりの賃金を基に最低賃金を算出する必要があります。

時給制の場合は、時給でそのまま判断できますが、月給制や日給制などの場合は下記の通りの方法で算出します。

①年俸制の場合:
 時間換算額=年俸総額÷1年間の所定労働時間数(所定労働日数×1日の所定労働時間数)

②月給制の場合:
 時間換算額=直近の給与支払時における月給(構成要素に算入されるもののみ)÷1か月平均所定労働時間数
 ※1 か月平均所定労働時間数=(365日-1年の休日合計日数)×1日の所定労働時間数÷12か月

③日給制の場合:
 時間換算額=直近の給与支払時における日給(次項で構成要素に算入されるもののみ)÷1日の所定労働時間数

④歩合給(インセンティブ給)の適用がある場合の、歩合給部分の時間換算額の算定方法:
 ※歩合給については、1年間(12か月分)の歩合給の平均時間単価を算出(雇入れ後1年未満の場合は、雇用されてからの期間で算出)
 ※固定給との併用の場合、通常の方法で算出した固定給の「時間給または時間換算額」に、上記による歩合給の時間単価を合算

「時間給または時間換算額」の構成要素
 ・算入されるもの基本給、役職手当・職務手当等(算入されないものを除くすべての諸手当)
 ・算入されないもの<限定列挙>賞与、時間外勤務手当・休日出勤手当・深夜勤務手当、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、臨時の賃金(結婚祝賀金等)、役員手当

いのうえ

上記で算出した「時間換算額(時間単価)」において、事業場内で最も最低となる賃金が「事業場内最低賃金」となります。

地域の最低賃金より+50円とするとは?

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠の申請条件は、「事業場内最低賃金」「地域の最低賃金より+50円」とすることです。

地域の最低賃金とは、各都道府県ごとに定められている最低賃金のことです。

ちなみに福岡県の2023年11月時点の最低賃金は941円となっています。

地域別最低賃金は毎年見直しが行われ、毎年10月1日より発効されることになります。

「事業場内最低賃金」を「地域の最低賃金より+50円」とするためには、以下の条件を満たす必要があります。

【申請時】事業場内最低賃金が地域の最低賃金+50円未満の場合

補助事業の完了時点において、事業場内最低賃金申請時の地域別最低賃金より+50円以上であること

賃金引上げサンプル①

【申請時】事業場内最低賃金が地域の最低賃金+50円以上を達成している場合

補助事業の完了時点において、申請時の事業場内最低賃金より+50円以上であること

賃金引上げサンプル②
いのうえ

「補助事業完了時」とは、申請した補助事業における事業の実施が完了した時点のタイミングです。実績報告時に上記の条件を満たしているかの証拠書類を提出することになります。

赤字事業者の条件とは何か?

 先述の通り、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠において、赤字事業者補助率が2/3から3/4に引きあがる特典があります。

赤字事業者に対する追加条件は下記の通りです。

赤字事業者の追加条件とは

  • 直近1期または直近1年間課税所得がゼロ以下である事業者であること

賃金引上げ枠の必要書類は何か?

小規模事業者持続化補助金を賃金引上げ枠で申請するためには、通常の必要書類に追加して以下の書類の提出が必要となります。

提出書類法人個人
申請時・賃金引上げ枠申請に係る誓約書
・直近1か月間の賃金台帳(役員、専従者従業員を除く全従業員分)
・雇用条件が記載された書類の写し
例)雇用契約書、労働条件通知書、就業規則等
・直近1期に税務署へ提出した税務署受付印のある、法人税申告書の別表一・別表四
(赤字事業者のみ)
実績報告時・賃金引上げ枠に係る実施報告書
・直近1か月間の賃金台帳(役員、専従者従業員を除く全従業員分)
・雇用条件が記載された書類の写し
例)雇用契約書、労働条件通知書、就業規則等

いのうえ

必要書類の詳細は事務局ホームページの公募要領でご確認ください。

賃金引上げ枠はこんな人におすすめ

以上のことから、小規模事業者持続化補助金を賃金引上げ枠で申請するのは以下のような人におすすめです。

賃金引上げ枠がおすすめな人

  • 積極的な賃上げに取り組みたい(取り組んでいる)
  • 販路開拓や生産性向上のために、大きな(例えば100万円以上の)投資を行いたい
  • 直近1期または直近1年間課税所得がゼロ以下である人

まとめ

今回の記事では、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠についてまとめました。

【小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠とは?】
補助上限が200万円にアップする特典がある申請枠である

■さらに赤字事業者は補助率が2/3から3/4に引き上げられる
事業場内最低賃金を地域の最低賃金より+50円とする事業者が対象である
賃上げに積極的な事業者におすすめ

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠の活用を検討する人の参考になれば幸いです。

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