小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ特例とは?賃金引上げ特例の活用方法について

小規模事業者持続化補助金の一般型には「賃金引上げ特例」という特例があります。
「賃金引上げ特例」は積極的な賃上げに取り組む事業者を支援するための特例となります。
今回の記事では小規模事業者持続化補助金の「賃金引上げ特例」について、内容と活用方法をまとめます。
小規模事業者持続化補助金とはどんな補助金?
小規模事業者持続化補助金(以下持続化補助金)とは、商工会・商工会議所当などと一体となって経営計画を作成し、販路開拓などに取り組む小規模事業者を支援する補助金です。
持続化補助金には、「一般型」「創業型」「共同・協業型」「ビジネスコミュニティ型」が設けられており、「一般型」には、補助金が拡充される「インボイス特例」や「賃金引上げ特例」などの特例も設定されています。
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- 新しいお店や商品、サービスを宣伝したい
- 新しい商品やサービスの開発をしたい
- 売上を拡大するための設備を導入したい など
→販路を開拓したい事業者におすすめ!
申請類型一覧
類型 | 対象 | |
一般型 | 通常枠 | 経営計画を作成し販路開拓等に取り組む小規模事業者を支援 |
インボイス特例 | 免税事業者から課税事業者に転換する事業者を支援 | |
賃金引上げ特例 | 事業場内最低賃金を50円以上引き上げる小規模事業者を支援 | |
創業型 | 産競法に基づく「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者を支援 | |
共同・協業型 | 地域に根付いた企業の販路開拓を支援する機関が地域振興等機関となり、参画事業者である10以上の小規模事業者の販路開拓を支援 | |
ビジネスコミュニティ型 | 商工会・商工会議所の内部組織等(青年部、女性部等)を支援 |
補助率・補助上限額(一般型・創業型)
各申請類型ごとの補助率・補助上限額は以下の通りです。
申請類型 | 補助上限 | 補助率 | 対象経費 | |
一般型 | 通常枠 | 50万円 | 2/3 ※賃金引上げ特例を選択した”赤字事業者”は3/4 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、旅費、開発費、資料購入費、借料、設備処分費、委託・外注費(税理士等への相談・コンサルティング費用など) |
インボイス特例 | 50万円上乗せ | |||
賃金引上げ特例 | 150万円上乗せ | |||
創業型 | 200万円 (インボイス特例は適用可) |
直近5回の申請状況と採択率
持続化補助金制度全体の直近5回の申請状況と採択率は以下の通りです。
公募回 | 申請締切日 | 採択発表日 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
---|---|---|---|---|---|
第12回 | 2023年6月1日 | 2023年8月23日 | 13,373 | 7,438 | 55.6% |
第13回 | 2023年9月7日 | 2023年11月27日 | 15,308 | 8,729 | 57.0% |
第14回 | 2023年12月12日 | 2024年3月4日 | 13,597 | 8,497 | 62.5% |
第15回 | 2024年3月14日 | 2024年6月5日 | 13,336 | 5,580 | 41.8% |
第16回 | 2024年5月27日 | 2024年8月8日 | 7,371 | 2,741 | 37.2% |
申請スケジュール
第17回 持続化補助金 | 申請受付開始 | 2025年5月1日(木) |
申請受付締切 | 2025年6月13日(金) | |
事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 | 2025年6月3日(火) | |
交付決定予定 | 2025年8月頃 |
※弊所での受付期間は、申請までの日数や現在のご依頼状況によって判断いたします。
すでに受付期間が終了している場合もございますのでご了承下さい。
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ特例の特典と条件
賃金引上げ特例の特典とは?
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ特例の特典は、補助上限額がアップすること、さらに赤字事業者の場合は補助率が上昇することです。
賃金引上げ枠では、補助上限額が通常枠の50万円に150万円プラスされ合計200万円となります。
インボイス特例も活用することで最大250万円まで補助上限額を引き上げることが可能です。
なお、賃金引上げ枠で申請する業績が赤字の事業者については、補助率が2/3から3/4に引きあがるという特典もあります。

補助上限額が200万円(インボイス特例も含むと250万円)、赤字事業者の場合は補助率3/4と非常に優遇される特例です。
賃金引上げ特例の条件とは
小規模事業者持続化補助金を賃金引上げ枠で申請するためには、以下の条件を満たす必要があります。
賃金引上げ枠で申請するために必要な条件とは
- 事業場内最低賃金を地域の最低賃金より+50円とすること
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事業場内最低賃金ってなんのこと?いつの時点で判断されるの?

賃金引上げ枠の申請条件についてもう少し詳しく見ていきましょう。
事業場内最低賃金とは何か?
「事業場内最低賃金」とは、事業者の事業場(店舗や会社)における最低賃金のことです。
正規雇用者だけではなく、パート・アルバイト等の非正規雇用者を含めて判断をします。
「最低賃金」の概念は「時間単価」です。
1時間当たりの賃金を基に最低賃金を算出する必要があります。
時給制の場合は、時給でそのまま判断できますが、月給制や日給制などの場合は下記の通りの方法で算出します。
①年俸制の場合:
時間換算額=年俸総額÷1年間の所定労働時間数(所定労働日数×1日の所定労働時間数)
②月給制の場合:
時間換算額=直近の給与支払時における月給(構成要素に算入されるもののみ)÷1か月平均所定労働時間数
※1 か月平均所定労働時間数=(365日-1年の休日合計日数)×1日の所定労働時間数÷12か月
③日給制の場合:
時間換算額=直近の給与支払時における日給(次項で構成要素に算入されるもののみ)÷1日の所定労働時間数
④歩合給(インセンティブ給)の適用がある場合の、歩合給部分の時間換算額の算定方法:
※歩合給については、1年間(12か月分)の歩合給の平均時間単価を算出(雇入れ後1年未満の場合は、雇用されてからの期間で算出)
※固定給との併用の場合、通常の方法で算出した固定給の「時間給または時間換算額」に、上記による歩合給の時間単価を合算
■「時間給または時間換算額」の構成要素
・算入されるもの基本給、役職手当・職務手当等(算入されないものを除くすべての諸手当)
・算入されないもの<限定列挙>賞与、時間外勤務手当・休日出勤手当・深夜勤務手当、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、臨時の賃金(結婚祝賀金等)、役員手当

上記で算出した「時間換算額(時間単価)」において、事業場内で最も最低となる賃金が「事業場内最低賃金」となります。
地域の最低賃金より+50円とするとは?
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠の申請条件は、「事業場内最低賃金」を「地域の最低賃金より+50円」とすることです。
地域の最低賃金とは、各都道府県ごとに定められている最低賃金のことです。
ちなみに福岡県の2025年3月時点の最低賃金は992円となっています。
地域別最低賃金は毎年見直しが行われ、毎年10月1日より発効されることになります。
「事業場内最低賃金」を「地域の最低賃金より+50円」とするためには、以下の条件を満たす必要があります。
【申請時】事業場内最低賃金が地域の最低賃金+50円未満の場合
補助事業の完了時点において、事業場内最低賃金が申請時の地域別最低賃金より+50円以上であること

【申請時】事業場内最低賃金が地域の最低賃金+50円以上を達成している場合
補助事業の完了時点において、申請時の事業場内最低賃金より+50円以上であること


「補助事業完了時」とは、申請した補助事業における事業の実施が完了した時点のタイミングです。実績報告時に上記の条件を満たしているかの証拠書類を提出することになります。
赤字事業者の条件とは何か?
先述の通り、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠において、赤字事業者は補助率が2/3から3/4に引きあがる特典があります。
赤字事業者に対する追加条件は下記の通りです。
赤字事業者の追加条件とは
- 直近1期または直近1年間の課税所得がゼロ以下である事業者であること
賃金引上げ枠の必要書類は何か?
小規模事業者持続化補助金を賃金引上げ枠で申請するためには、通常の必要書類に追加して以下の書類の提出が必要となります。
提出書類 | 法人 | 個人 | |
---|---|---|---|
申請時 | 直近1か月間における労働基準法に基づく賃金台帳(役員、専従者従業員を除く全従業員分) | 〇 | 〇 |
役員、専従者従業員を除く全従業員の雇用条件(1日の所定労働時間、年間休日)が記載された書類 例)雇用契約書、労働条件通知書、就業規則等 | 〇 | 〇 | |
・直近1期に税務署へ提出した税務署受付印のある、法人税申告書の別表一・別表四 | 〇 (赤字事業者のみ) | ||
実績報告時 | ・賃金引上げ枠に係る実施報告書 | 〇 | 〇 |
直近1か月間における労働基準法に基づく賃金台帳(役員、専従者従業員を除く全従業員分) | 〇 | 〇 | |
役員、専従者従業員を除く全従業員の雇用条件(1日の所定労働時間、年間休日)が記載された書類 例)雇用契約書、労働条件通知書、就業規則等 | 〇 | 〇 |

必要書類の詳細は事務局ホームページの公募要領でご確認ください。
賃金引上げ枠はこんな人におすすめ
以上のことから、小規模事業者持続化補助金を賃金引上げ枠で申請するのは以下のような人におすすめです。
賃金引上げ枠がおすすめな人
- 積極的な賃上げに取り組みたい(取り組んでいる)人
- 販路開拓や生産性向上のために、大きな(例えば100万円以上の)投資を行いたい人
- 直近1期または直近1年間の課税所得がゼロ以下である人
まとめ
今回の記事では、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠についてまとめました。
【小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ特例とは?】
■補助上限が200万円にアップする特典がある申請枠である
■さらに赤字事業者は補助率が2/3から3/4に引き上げられる
■事業場内最低賃金を地域の最低賃金より+50円とする事業者が対象である
■賃上げに積極的な事業者におすすめ
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ特例の活用を検討する人の参考になれば幸いです。
当事務所で申請支援を行っております。
当事務所におきましても、小規模事業者持続化補助金の申請支援を行っております。
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